よい心持に坐っておったが、しばらくすると非常な速力で運転し始めた。
書生が動くのか自分だけが動くのか分らないが無暗に眼が廻る。胸が悪くなる。到底助からないと思っていると、どさりと音がして眼から火が出た。
それまでは記憶しているがあとは何の事やらいくら考え出そうとしても分らない。
ふと気が付いて見ると書生はいない。たくさんおった兄弟が一疋も見えぬ。肝心の母親さえ姿を隠してしまった。
その上今までの所とは違って無暗に明るい。眼を明いていられぬくらいだ。
はてな何でも容子がおかしいと、のそのそ這い出して見ると非常に痛い。
吾輩は藁の上から急に笹原の中へ棄てられたのである。
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